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若者はテレビを見ない? テレビ離れの原因と変わる若者の暮らし

「テレビ離れ」という言葉が示す若者の変化

若者のテレビ離れが進んでいる ――。

現代の若者の生活スタイルを語るうえで、この言葉を耳にする機会は少なくありません。スマートフォンの普及やSNSの利用拡大により、情報や娯楽に触れる方法はこの十数年で大きく変化しました。

特にZ世代を中心とした若年層では、「テレビを持たない生活」も一般化しつつあります。実際、ひとり暮らしの部屋にテレビを置かないという選択も増えており、生活必需品ではなくなっているのかもしれません。

では、本当に若者はテレビを見なくなったのでしょうか。

本記事では、テレビを取り巻く環境の変化に触れながら、若者のテレビ離れの実態とその背景について考察していきます。

かつてテレビは“憧れの家電”だった

まずは少し、テレビの歴史を振り返ってみましょう。

テレビの正式名称は「テレビジョン(television)」。ギリシャ語の「遠く」を意味する tele と、ラテン語で「見る」を表す vision が組み合わさって生まれた言葉だといわれています。そこから略称として「TV」という表現も定着しました。

日本でテレビ放送が始まったのは1953年(昭和28年)。同年2月にNHKが放送を開始し、8月には民間放送もスタートします。白黒テレビが発売されると、洗濯機・冷蔵庫と並んで「三種の神器」と呼ばれる存在となりました。当時の価格は約30万円で、サラリーマンの平均月収が3万円程度といわれていた時代であり、テレビはまさに“憧れの家電”だったのです。

さらに1960年代の高度経済成長期になると、カラーテレビ、クーラー、自動車が「新・三種の神器」と呼ばれ、豊かな暮らしの象徴として広く普及していきました。

つまり、テレビは長きにわたって日本の家庭生活の中心的なメディアだったのです。

データで見る若者のテレビ離れ

しかし近年、その位置づけは大きく変わりつつあります。若年層のテレビ購入数を調べてみると、2025年時点で29歳以下のテレビ購入数量は2000年以降で最低水準となっています。(図1)
テレビ購入の減少自体は全世代で見られる傾向ですが、若年層の落ち込みは特に顕著です。

2010〜2011年には地上デジタル放送への移行に伴う“駆け込み需要”によって、テレビの販売が一時的に増加しました。しかし、その影響も若者層では比較的小さく、そもそもテレビ購入への関心が低いことがうかがえます。

(図1)

この背景にあるのが、テレビ視聴時間の減少です。総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、テレビ視聴時間は年代が若いほど短く、年齢が上がるほど長くなる傾向がはっきりと示されています。(図2・3) 10〜40代ではテレビよりもインターネット利用時間のほうが長く、特に10~30代ではその差が歴然です。

かつて国民的メディアとして存在感を持っていたテレビですが、令和の時代では若年層を中心にその影響力が弱まりつつあるといえるでしょう。

(図2)
(図3)

加えて興味深いのは、テレビ視聴時間の長さが30代>20代>10代と若いほど短いという点です。この傾向が今後も続けば、若者が年齢を重ねてもテレビ視聴時間が増える可能性は低いでしょう。一方で、休日では「全年代」でテレビ視聴時間とネット利用時間がほぼ半々になっているように、各世代が年齢を重ねることで割合も変化していくのか、あるいは現状のような割合のまま推移していくのか、今後の注目点となりそうです。

参考:若年層のテレビ購入数量は過去最低水準へ | SOMPOインスティチュート・プラス

(図1)出典:若年層のテレビ購入数量は過去最低水準へ | SOMPOインスティチュート・プラス

(図2・3)出典:情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書「【令和6年度】 主なメディアの平均利用時間[図2]平日[図3]休日)| 総務省「調査結果報告書」

若者のテレビ離れを生んだ6つの要因

では、なぜ若者はテレビから離れていったのでしょうか。主な要因を考えてみましょう。

1)スマートフォンの普及

おそらく最も大きな要因はスマートフォンの存在です。スマートフォンがあれば、テレビ番組の見逃し配信や動画コンテンツをいつでも視聴できます。場所を選ばず、通勤・通学中やカフェなどでも楽しめる点は、固定型のテレビにはない大きなメリットです。生活スタイルが多様化する現代では、決まった時間に自宅でテレビを見るという習慣そのものが減りつつあります。

2)見逃し配信と“タイパ”志向

以前の記事でも述べたように、近年の若者は「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する傾向があります。そのため、放送時間に合わせてテレビを見るよりも、自分の好きなタイミングでコンテンツを視聴できる見逃し配信を好む人が増えています。録画の手間がなく、必要な番組だけを効率よく見られる点も、若者にとって魅力といえるでしょう。

3)動画配信サービスの台頭

動画配信サービスの普及・充実も大きな影響を与えています。NetflixやAmazon Prime Videoなどのサービスでは、映画やドラマ、アニメ、バラエティなど多様なコンテンツの視聴が可能です。オリジナル作品も増え、テレビとは異なる魅力を持つメディアとして定着しました。「見たい作品を、自分で選んで見る」というスタイルが一般化したことも、テレビ離れの一因といえるでしょう。

4)娯楽の選択肢の増加

かつて家庭内の娯楽といえば、テレビや家庭用ゲーム機が中心でした。しかし現在では、SNS・動画/ライブ配信・オンラインゲーム・電子マンガなど、娯楽の選択肢が大きく広がっています。限られた時間の中で、より自分に合った楽しみ方を選ぶようになった結果、テレビ視聴の優先順位が下がったとも考えられます。

5)「受け身のメディア」への違和感

テレビは基本的に、放送局が編成した番組を視聴者が受動的に見るメディアです。一方、現代の若者は「見たいものを自分で探す」「興味のある情報だけを選ぶ」「SNSで意見を共有する」といった主体的なメディア利用に慣れています。“選択できる体験”を日頃行っている世代にとって、番組編成に合わせて視聴するテレビのスタイルはやや不自由に感じられるのかもしれません。

6)「ミニマルな生活」への移行

Z世代をはじめとする若者は、タイパと同様に、なるべくモノを持たない、必要なものだけを選ぶ“ミニマル”な生活を好むといわれています。テレビが設置スペースを取り、置き台も必要になるのとは対照的に、スマートフォンやタブレットなら場所を取らず、ベッドやソファ、デスクなど好きな場所で動画を楽しめるため、あえてテレビを置かないという選択も増えているのではないでしょうか。

参考:若者のテレビ離れの原因をデータから推測!テレビ広告の今後はどうなる? | SUNGROVE

若者は“映像コンテンツ”を見なくなったわけではない

とはいえ、若者が映像作品自体を見なくなったわけではありません。東京都でひとり暮らしをする20〜35歳を対象にした調査では、自宅でよく行うことの1位は動画視聴(69.5%)でした。(図4)
テレビを見る(45.8%)という回答も一定数ありますが、動画視聴よりは大きく下回っています。

この結果から読み取れるのは、「何を見るか」ではなく、「どの媒体で見るか」が変化しているという点です。若者はテレビ番組やドラマのような映像コンテンツを嫌っているわけではなく、自分の都合で視聴できるプラットフォームを選んでいるのです。

つまり、テレビ離れは「映像離れ」ではなく、「視聴スタイルの変化」ともいえるでしょう。

(図4)

(図4)「自宅でよく行うこと」(2024年3月実施、独自インターネット調査、n=456、東京都でひとり暮らしの20~35歳の男女)

テレビ離れによって変わる若者の暮らし方

このように、若者のテレビ離れは単にテレビの人気が低下したということではなく、メディアとの関わり方、あるいは生活スタイルや暮らしのあり方の変化を示していると考えられます。

現代の若者は、与えられた情報を受け取るだけではなく、「自分の興味に合うものを選ぶ」「自分から必要な情報を取り入れる」といった主体的な行動をとる傾向に変わってきています。

暮らしにおいても、特にひとり暮らしの若者の場合、住まいはコンパクトな空間が多く、家具や家電を必要最小限に抑える方向へ進んでいるように思われます。また、Z世代を中心とした現代の若者は、ミニマルで機能的な生活を好む人も少なくありません。こうした結果、テレビのような大型家電は優先順位が下がりやすくなっているのではないでしょうか。

一方で、動画視聴そのものの需要は高いため、スマートフォンやタブレットのみならず、プロジェクターなどを使った新しい視聴スタイルも広がりを見せていくものと推測されます。

これまで当然のようにあった「テレビを中心とした暮らし」の考え方が変わり、住まいづくり・部屋づくりにおいても、この変化を踏まえながら新たな発想で進化していくのかもしれません。

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